身勝手な男に「死の復讐」を始めた北朝鮮の女性たち
北朝鮮で女性たちの「復讐」が、静かにはじまろうとしている。といっても、体制や政治に対してではなく、北朝鮮特有の男性上位社会に対する復讐だ。
南北共に、朝鮮半島には儒教文化が根強く残っている。北朝鮮は、社会主義ゆえに男女平等をうたっているが、韓国以上に儒教思想の影響力は強く、女性蔑視は根強い。女性の地位は低く、その影響は「ブラジャー着用の可否」にまで影響していたぐらいだ。
それに加えて、人権侵害が広範囲に行われていることを鑑みれば、北朝鮮における女性の立場がいかに過酷なものかは想像に難くない。
北朝鮮における女性への人権侵害の代表例が「喜び組」だ。
喜び組を含む国家機関に奉仕する女性たちは、早ければ16才ぐらいから選抜される。また、子どもがいる離婚した女性や、特殊任務で死亡した国家機関員の未亡人など、経済的に余裕がない女性たちも選ばれる。
いずれの女性たちにも選択の余地はない。権力層の私生活に関わる立場だけに、生まれ育った土地を離れ、実家との連絡もたち、身も心も国家のために捧げなければならない。もちろん、その見返りとして一般庶民とは違った待遇を与えられるが、やはり北朝鮮特有の人権侵害と言うべきだろう。
女性に対する人権侵害の根底には、北朝鮮体制特有の女性蔑視観がある。さらに、喜び組という特殊なケースはさておき、一般社会における女性の地位も決して高くはない。
例えば、一般家庭の夫婦生活では、こんなケースが多い。男性たちは、職場に出勤する義務があるが、給料はコメ1キロを買えるか買えないかぐらいの少額だ。とても生計を維持できないため、女性たちは市場で商いに励み、一家の大黒柱として薄給の夫と家族を養う。それにも関わらず、夫の方は、大して働きもせず、家ではタバコをふかしながらゴロゴロする。酒を飲んではくだをまく――そんなケースが少なくないのだ。